青山学院大学ジェロントロジー研究所

連続講演会 第4回
「少子高齢社会を支える革新的サイバニクス-人とテクノロジーが共生するテクノ・ピアサポート」講師 山海嘉之氏

講師 山海嘉之氏

 当研究所第4回連続講演会は,2019年11月16日に行われました。今回の講師,山海嘉之先生は,筑波大学システム情報系教授,同大学サイバニクス研究センター研究統括,ベンチャー企業として起業し株式上場を達成したCYBERDYNE(株)代表取締役社長/CEOの他,多くの役職に就かれ,紫綬褒章,内閣総理大臣賞,他,多くの受賞歴をお持ちです。

 先生は,脳・神経科学,行動科学,ロボット工学,IT,人工知能,システム統合技術,生理学,心理学,哲学,倫理,法学,経営などの異分野を融合複合した新学術領域『サイバニクス:人・ロボット・情報系の融合複合』を創成されました。「人」と「サイバー・フィジカル空間」を一体的に扱う『サイバニクス』を駆使することで,超高齢社会が直面する社会課題解決に向け,革新技術創生,新産業創出,人材育成を同時展開,好循環のイノベーションを推進し,未来開拓に挑戦してこられました。脳神経系・身体系の機能改善・機能再生のための世界初の装着型サイボーグ「HAL®」の基礎原理研究から試作,評価,社会実装までを達成され,治療効果のある医療機器「医療用HAL」をはじめとする様々な革新的サイバニックシステムの研究開発・社会実装を推進し,「重介護ゼロ®社会」「Society5.0/5.1」という社会変革・産業変革の実現に向けた取り組みを推進されています。講演会では,これらの先生の活動の概要をわかりやすく説明頂きました。

 参加者は,幅広い年齢層のかたたち約250名で,中には小中学生の子供たちの顔もありました。子供たちに気づいた先生は,当初1時間でお願いしていたところ,急遽予定を変更し,先生の生い立ちの話題から始まる1時間半以上もの熱いご講演をしてくださいました。質疑応答終了後には,個別の質問の長蛇の列ができ,参加者一人ひとりに大変丁寧に応じてくださり,その結果,会は,実に3時間以上におよぶこととなりました。

 講演では,ずっと車椅子生活だった人がHALを使って歩けるようになる姿,幼少期から両下肢が麻痺していた子供の足が動き始める様子を見て,会場は何度も驚きと感動の空気に包まれました。先生は終始楽しそうにお話しをされ,話題は,国の規制を自ら打ち破り新しい治療法を社会に浸透させてきた活動から,iPS細胞などを用いた再生医療への応用等の夢のある未来,そして,若者育成の必要性と教育機関の役割にまでおよびました。人や社会のために一つずつ着実にミッションを実現させているお姿から,参加者の多くが夢を持ち生きることの大切さにあらためて気づき,また,人とテクノロジーが共生することで,超高齢社会においても人類は明るい未来を築けることを感じさせてくれるご講演でした。